2009年11月07日

理系の科目は解いて覚える科目 ~3

◆◆「目からウロコの英語勉強法」◆◆

去年卒業したO君は、化学が大の苦手でした。
数学は得意科目なのに、化学の授業中は寝ていることもあったとか。
「あのままの状態が続いていれば、僕はクラスでビリになったかもしれない」
と、本人はいまだに振り返っています。

努力家のO君らしくもないと思いましたが
県内屈指の名門進学校で
なんでもマカセナサイ、というわけにもなかなかいきません。
中には、不得意な科目があっても、不思議ではないのかもしれません。

しかし、センター試験では化学は捨てられない科目です。
一・二年の基礎の段階で手を打っておかなければ
その分を後で取り返すことは、困難になってしまいます。

そこで一言アドバイス。
「化学も数学と同じで、問題を解かなければダメだよ。
学校で使っている『セミナー(教科書傍用の問題集)』を、授業と前後しながらやってごらん」
と勧めてみたのです。

あまり大きな声ではいえませんが
じつは、このようなケースは、私にとっても「オイシイ」話なのです。

数学が得意であるということは、理系の素質があるということです。
それなのに、物理や化学が苦手であるという理由は、ひとつしかありません。
それはただ単に、勉強方法を勘違いしているからにすぎないのです。

数学が得意な生徒は、例外なく「問題を解く」という習慣が付いているはずです。
だから、数学の成績が伸びるのです。
物理や化学でも、それと全く同じことをすればいいのに
なぜか難しく考えてしまって
肝心の「問題を解く」という作業を忘れてしまう、というケースが結構多いものです。

したがって、解決策はいたって簡単です。
本来なすべきことは何であるのか、ということに気づかせてあげればいいのです。
具体的には、教科書傍用の問題集を解かせることです。
それだけで、不死鳥のように復活するのです。
そして、「これも、適切なアドバイスをしてくれたあの先生のおかげだ」
などと、お手柄はこちらのモノになるのです。
努力をしたのは、本人以外の誰でもないのに・・・

こんな「オイシイ」話は、そうそうあるものではありません。

さて、くだんのK君、もともと集中力はあるほうなので
それから半月(半年ではありません!!)もしないうちに、力を付け始めました。
なぜ力が付いたのが分かったのかというと、質問をしなくなったからです。

もちろん、最初は一つ一つ説明をしたのは、言うまでもありません。
授業中寝ていたくらいでしたから、自力で解けるわけはありません。
しかし問題を解いていくうちに、ある程度自分で納得できるようになります。
これは、例外なく誰でもそうなります。
今まで見えなかったものが、少しずつ見えてくるようになるのです。

そうなってくると、人間というものは「説明」されることをむしろ嫌がるのです。
特に、理系のセンスに恵まれた人間ならば、なおさらのことです。
自分の力で解けるかもしれないものを、他人にあれこれ口を挟まれたくないのでしょう。
他人に邪魔をされず、ともかく「自分で」解けることを確かめたいのです。
それは、人間の本能的な欲望である、と言ってもいいかもしれません。
食欲や生存欲のように、「知的探求欲」もまた人間にとっては本能的な欲望であり
一度火が点いたら誰にも止められないものなのです。

「どう?何か質問はない?」

などと、たまに様子をうかがいに行っても

「今忙しいからあっち行ってて」
ってなもので、適当にあしらわれてしまいます。

そうなったら、間違いなくホンモノであると言えます。
分かるでしょうか?
これが「問題を解くこと」の魔力なのです。
分かり始めたら、スミからスミまで分からないと気が済まないのです。

それから数ヵ月後の期末試験では
O君は、化学で成績優秀者の番付表に載ったということです。
そして現在、彼は国立T大学医学部で医学の勉強に励んでいます。

他にも例はあります。

体操部のNさんは、薬学部に進学することを希望していました。
3年になって、志望校を絞り込んで受験科目を確認したら
なんと、物理が必須科目になっていたというのです。
じつは、薬学部の受験に物理は必要ない、と勝手に思い込んでいたので
2年の時には、ほとんど力を入れていなかったのです。
当然といえば当然かもしれませんが、成績も赤点でした。

Nさん顔色を失って、「どうしたらいいの?」と聞くので
「『アクセス』をとりあえず一通り解いてごらん」とアドバイスをしました。
『アクセス』とは、2年のときに使った教科書傍用の問題集です。
O君と同様、Nさんも理系のセンスはかなりあるほうなので
問題集の問題を解いていけば、やがてその本性を表すだろうことは目に見えていました。

ところで、このような場合、私はひとつのルールを守ることにしています。
それは「本人から質問があるまでは、こちらからは極力口を挟まない」ようにすることです。

先生と呼ばれる人種は、職業病とでも言うのでしょうか
ともすれば、生徒が自分の力で考える前に
ついつい「説明」をしてしまいたがる悪い癖があるものです。

もちろん、質問されたときには
それがどんな問題であっても、即座に答えられるだけの力量は持たなければなりません。

しかし、だからと言って「出すぎた」マネは慎まなければならないのです。
せっかく自力で考えようとしているときに、その出鼻をくじくようなことは
爆発的な成長への、千載一遇のチャンスを潰してしまうことにもなりかねないからです。

さてNさんは、2ヶ月くらいの間にアクセスを丸々一冊平らげてしまいました。
しかも、そのほとんどを自力で解いてしまったのです。
やはり、理系のセンスは抜群だったようです。

いつ、どんな質問が飛んできてもいいように、準備万端を整えていた私としては
正直、アテが外れた感がしなかったわけではありません。
中には、「アッと驚く解法術」や
ぜひとも知っておきたい「取って置きのウラ技」などもあったのです。

しかし今となっては
それらにどれほどの価値があったのか、疑問であると言わざるをえません。
なぜならば、それを上回る成果をNさんは達成したからです。

なぜでしょうか?
なぜ、Nさんはそれほどの成長を遂げたのでしょうか。

それは、自力で考えたからです。
自力で考えることにより、その周辺の景色も一気に見通しが利くようになったのです。
人に親切に教えてもらうより、自分で考えたほうがはるかに理解力は深まり
さらにいっそう「考える力」がつくのです。
人間の脳とは不思議なものです。
考えれば考えるほど「考える力」がつくのですから・・・

とは言え、ただ一度だけ質問されたことがありました。
「この問題が、どうしても答えが合わない」と、めずらしく困った顔をしていたのです。

それはそうだろう。
ひとつやふたつは解けない問題があっても当然だ。
たまには質問もしてくれなければ
こちらの立場もなくなってしまうというものです。

しかし、よくよく調べてみたら、それは回答書のプリントミスでした。
何回計算しても、回答書の答えよりNさんの計算のほうが正しかったのです。
「やっと出番が回ってきた!!」
と小躍りして喜んだ私の期待は、無残にも打ち砕かれてしまいました。
人生とは、思い通りにいかないものです。


静岡県静岡市清水区高橋6丁目6-48 ガルバゼミ
★ ホームページ http://garba-zemi.jimdo.com/
★ メール garba-zemi@hi3.enjoy.ne.jp

  




この記事へのコメント
日曜大工と007は同じひとなのですか???ブログの初心者です。

初めまして。 

出会いをとても大切にしています。だからO君の出会いに乾杯!

いい人、いい先生、いい音楽、良い物等沢山の出会いに恵まれ、でもそれを受けとめる能力を持ち合わせて初めてO君のように輝かしい未来を迎えることができると日頃私目の信条にしています。

だからO君の出会いに乾杯! それとO君の能力にも乾杯!

沢山の工夫をされた指導をなさっていられるようですね。頑張ってください!

私目のブログに足を踏み入れて下さってありがとう。今後もどうぞ宜しくお願い致します。


Long Beach, California
Posted by ロングビーチCAロングビーチCA at 2009年11月08日 00:36
日曜大工と007は、同一人物です。
本業は、見栄えのしない私塾の講師。
守備範囲は、英語・数学・物理・化学です。(本命は数学かな?)

さて、日本の英語教育のあり方に腹立たしさを感じているのは、私だけではないと思いますが、それでも受験生は、その「バカバカしい受験英語」を習得しなければなりません。
いいとか、悪いとかの問題ではなく、それが現実なのです。

そこで、少しでもその苦労が報われるような学習法を提案したいと思い、ブログを立ち上げた次第です。

また、日曜大工は趣味の一環として楽しんでいます。
日曜大工って難しそうですが、本当は材料さえ揃えば意外と簡単に出来るものなのです。では、その材料はどうして手に入れるのか?ということなのですが、そうした問題も、提案していきたいと思っています。

ロングビーチCAさんはブログ初心者ということですが、私も同様です。私なんかは、アラカン(around 還暦)になってから始めたので苦労しています。お互いにがんばりましょう。
Posted by 007007 at 2009年11月08日 22:11
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